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抜歯の判定基準

抜歯の判定基準

その境界線はどこにあるのでしょうか?

今回は、あえて抜歯をすべき歯を、抜かずに治療した症例を使って、私たちが考える抜歯の判断基準について述べてみたいと思います。そしてそれは、ひいては私たちの「診療哲学」-何のために歯を治療するのか?- をご理解していただくことにつながると考えます。

初診
初診の口腔内
70歳台後半の女性です。
とても明るく素敵な方でした。しかしお口の中は大変困った状態になっていました。
前歯がグラグラしている
特にこの前歯はグラグラで、「咬むのが怖い」とのことでした。
とりあえず、裏側に溝を掘りワイヤーと接着剤で応急に固定をします。そして.....
プランニング
治療計画に必要な模型づくり

当院での治療の進め方に従い、正確な検査をおこなった後、治療計画を立てます。そしてそのプランに従いプラニング模型を作ります。かなり悩みました。

「抜くべきか?抜かざるべきか?」

その結果、この治療プランに決定しました。

義歯をはずした状態

個々の歯の状態については述べません。左がこの方の治療終了後の義歯をはずした写真です。右が、私の通常の判断基準で抜歯したときの治療終了後のシミュレーションです。

女性が自分の顔を鏡で見たとき、このような口元にどのように感じるでしょう?

これが私が悩んだ最大の理由なのです。

カウンセリング

私は治療プランをこのようにご説明しました。

「下の歯が1本だけしか残っていない状態、上の前歯が半分しか残っていない状態をご自分で見られたらとても惨めな感じがすると思うのです。ですので、問題がある歯を抜かずに残して治療をしようと思います。そうすることによって、義歯を外してもきれいな口元を作ることができます。

もちろんその歯は先々で問題を起こして、抜歯が必要な時がくるかも知れません。
そのときは抜歯をしますが、その時点でも義歯を改造することで、大がかりな治療をすることなく後のフォローが可能です。いわば二期工事が必要になります。
どうお考えになりますか?」

この方はこうお答えになりました。

「はい。それで結構です。そうして下さい」

この方のご年齢を考えると、あと10年、いかに活き活きと生きていくのか? が大きな問題となります。女性ですので、活き活きと生きるためには外見は大変重要な要素だと思います。

私は何のために歯を治療しているのでしょうか?
その理由はただ一つ。

「あなたの人生を幸せなものにするため」

そのための非抜歯の判定なのです。ご興味があれば詳しくは「院長室ブログ: 抜きたくない感情」をご覧下さい。

治療開始
下顎から治療を開始
治療の原則に則って、下顎の治療から開始します。どうしても残せない歯を抜歯し、その場で仮の歯をセットします。
上の前歯を治療
次は上の前歯です。
不具合はクラウンをはずし、抜歯をし、仮の歯をセットします。このような大がかりな治療の間でも、必ず義歯も入れられるように工夫をしておきます。
セラミックブリッジ
抜歯の傷が治れば型を取り、最終のセラミックブリッジをセットします。もちろんこれも下の前歯から。
上顎の前歯

次は上顎の前歯。

もちろんこの段階でも義歯は使えるようにしてあります。右の写真が最終のクラウンブリッジをセットしたところ。左上の奥歯は抜歯の予定でしたが、思った以上に良くなりさらに非抜歯の判定をしました。
それは、この歯があれば、これから作る義歯の安定が格段に良くなるからです。

下顎から治療を開始

歯がない部分はインプラントではなく、シンプルな金属床義歯で治療をしました。

局部義歯 »

それはこの方がインプラントをあまり希望されなかったことと、これからお口の状態が変わる可能性があるためです。
これが上顎の義歯。

下顎の義歯

こちらは下顎の義歯。

このような複雑な義歯にしなかったのも、義歯が必要になったときに改造が大変困難なものになるためです。

治療終了

治療前と治療後

治療前と治療後治療終了後に、私の今回の治療についてもう一度お話をしました。

「この歯とこの歯は本来は抜歯をするべき歯です。しかし、あえて抜歯はしませんでした。その理由は最初にお話したとおりです。

もしこの歯を抜歯をすることになった場合は、義歯をこのようにします。この歯の場合はこうします。そうすれば大がかりな治療ではなく、2回ほどの治療でフォローができます」

「はい。わかっています。最初来たときは怖くて咬めませんでした。でも、今は何でも食べられます。
ありがとうございました」

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